皮膚科症例集

 当院で実際に行った症例の一部をご紹介いたします。 
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皮膚組織球腫

 若いプードルちゃんの顔面にカサブタを伴うドーム型の腫瘤が認められます。腫瘍でしょうか?
 こういった病変の多くは、もっと早期から発生しています。始めは小さな物ができ、次第に赤くドーム状に腫れ上がっていきます。病院に行こうと思う間に、カサブタが形成されてきます。このとき既に腫瘤は発育を止め、表面が崩れてカサブタになってくるのです。この間、3~4週間です。この後、次第に小さくなって消失します。
 これは、「皮膚組織球腫」です。針を刺して細胞を採取し、その形態より予測をつけ、見守ります。大きくなるケースでは、外科的に切除します。若齢に多く、頭部、顔面、足の皮膚に良く発生します。
 「腫瘍」と聞くと心配で手術を連想しますが、一般的に経過は良好です。
 

間擦疹

 犬の指の間が赤く腫れ、ペロペロ舐めています。これは「間擦疹」です。
 多くの犬の訴えとしては、「痛い」です。跛行(ピョコタン歩き)を示すことがあります。時に、「血脹れ」を起こし、パンクします。動物は痛がって執拗に舐めますので、その際は切開してしまった方が治りも早く、痛みから解放されます。慢性的なアレルギー性皮膚炎の続発症として起こるケースが多いです。
 この他、異物や、毛穴に住む「ニキビダニ」が原因となることもあります。そもそも慢性のアレルギー性皮膚炎を持っていたり、一度毛の根元が破壊されるとそれがきちんと再生されず、毛の物質が刺激になったりして再発しやすいです。
 治療は、原因によりますが、消炎剤や抗生物質投与、切開を行います。
 

医原性脱毛(ステロイド外用薬)

 当初外耳炎でステロイド入りの外用薬を処方され、いつの間にかその副作用により皮疹、皮膚の薄化、脱毛が認められたケースです。
 まだ、皮疹があるので外用薬を継続したいところですが、自信を持って休止します。改善には数ヶ月を要します。血行促進に配慮した外用薬を使うことで治癒が促進される可能性があります。
 

4月かかって改善されました。

皮膚糸状菌症

  若齢の猫に発生した皮膚糸状菌症です。猫の糸状菌症ですが、多くが犬由来の菌種です。子猫の場合は免疫力が無く、全身移行がおこりやすく注意が必要です。また、ご家族にも感染します。
 

 この子は若齢のため全身的な投薬を控え、シャンプー療法のみで改善を得ることができました。


ポメラニアン脱毛(初期)

 非常に初期の段階でオーナーよりご相談を受けたポメラニアン脱毛です。首肩周り・大腿部背側の薄毛・色素沈着がこの病気の始まりです。
 まだ、積極的な治療は行わず、メラトニンと当院処方のビタミン剤で長期的にコントロールできています。

猫の心因性脱毛

 猫ちゃんの口が届きやすいところがきれいに刈られています。被毛検査では、毛根の発育は問題なく、毛が根元でちぎれている様子が確認されます。 本当の意味の皮膚科疾患ではなく、行動学的異常です。
 治療は、ストレスの軽減を目的に、環境改善、フェロモン療法、療法食、サプリメント、薬物療法を併用して行います。

落屑(フケ症)

 高齢のワンちゃんの背中から大きなフケがボロボロ落ちます。何か難しいご病気でしょうか?
 いえいえ、単なる栄養不足です。幸いワンちゃんは食欲旺盛の子でしたので、大好きなご飯をいっぱい食べさせると共に、当院処方のビタミン剤を投薬し、見違えるほどツヤツヤ、若返りしました。
 当院では、多くの保険会社で対象外のサプリメントは極力使用せず、薬剤としてビタミン剤を調整しております。


ハムスター 由来不明 口腔内腫瘤

 ハムスターの口角に発生した腫瘤です。以前は全身麻酔をかけて切除していましたが、小動物故の麻酔のリスクを考慮し、無麻酔で対応しました。2〜3日で問題なく脱落しました。


肛門周囲腺腫

未去勢のワンちゃんの肛門脇に発生した腫瘍です。表面が自壊しています。針を刺して細胞を採取しますとおおよその診断がつき、手術のプランを練ります。男性ホルモンの関与が考えられ、腫瘍の切除に合わせて去勢を行います。


ハムスター 湿性皮膚炎

 ハムスターの肘内側に発生した皮膚炎です。紅斑と痒みが見られます。基本的には細菌が関与していますが、背景に肥満、高温多湿な飼育環境があります。単純に投薬しただけでは治りづらく、食事管理によるダイエット、飼育環境改善も同時に行います。


膿皮症

 1年前からの痒みでご相談いただいた子です。腹部と脇腹に湿疹があります。基礎疾患としてアトピー性皮膚炎が疑われますが、現時はアレルギーの活動はそれほどでなく、細菌が悪さをする膿皮症が主です。
 1日1回投与の抗生物質で良化しました。ただし、再発もおこりやすく日頃からスキンケアを心がけ、再発の際は早期に抗生物質外用薬で対応いただくようご案内しました。もちろんシャンプーは、控えて頂きます。

猫の皮膚潰瘍・好酸球性症候群

 保護された外猫ちゃんの首の皮膚がひどくただれています。皮膚の病変に同じくして、血液中の白血球の1種である好酸球が増加しており、猫の好酸球性潰瘍などとも呼ばれています。原因は、ノミなどの寄生虫、アレルギー、ウィルス感染等による免疫不全がありますが、全く分からない場合も多いです。
 アンテドラッグと言って局所で有効、その後速やかに分解され、全身への移行が少ない比較的安全な外用ステロイド薬「コルタバンス」により、治療しました。さらっとした使用感で、塗り薬を嫌がる猫達も受け入れてくれます。


アトピー性皮膚炎とニキビダニ症の併発例

 当院でアトピーに対する低容量ステロイド療法を行っていましたが、数年前にニキビダニ症を併発し、その後発毛が認められなかった子です。現在、ニキビダニ症は治癒し、痒みのコントロールもされていましたが発毛促進を期待し、新薬の「アポキル」とメラトニンを処方しました。

 3ヶ月間で発毛が認められ、アレルギーによる痒みもほぼ消失。ここ数年で最も良い状態となりました。


若年性ニキビダニ症

 生後1歳未満で発病する脱毛症です。若齢での皮疹、脱毛は、細菌、カビ、寄生虫等の感染因子を確実に診断します。この子は、抜毛による検査でニキビダニが検出されました。若年性のニキビダニ症が全身移行することは稀です。以前は、イベルメクチンというお薬を高容量で投与していましたが、最近の知見よりノミ・マダニの駆除剤が有効なことがわかり使用しました。
顕微鏡写真のどこにダニがいるのか、お分かりですか?


ステロイド外用剤による皮膚潰瘍

 春頃より猫ちゃんの額に強い痒みが現れ、ステロイド外用剤を連用していたところ、冬に潰瘍となってしまった子です。当初痒みからきた搔きむしりが、いつしかステロイド外用剤による皮膚炎、潰瘍となり、動物がカサブタをかきむしる行為をオーナー様が「痒み」とお考えになって、お薬を続けていたいたケースです。
 この場合、「勇気を持って」ステロイド剤を休止していただき、患部には血行促進の外用薬を塗っていただきます。カサブタが消失する頃には掻く仕草も無くなり、2週間後には、潰瘍がほぼ消失しました。

 


特発性脱毛症

 ミニチュアダックスフントの子です。まだ若々しい年齢ですが、脱毛と皮膚の菲薄化があり、そのため皮膚のバリア機能が低下し、膿皮症も繰り返していました。季節性の脱毛症でこのような脱毛パターをとる事もありますが、この子は、通年認められました。ホルモン検査を始め、各種検査に大きな異常はありませんでした。

 ステロイド等の特別なお薬を処方する事無く、栄養状態の改善とビタミン剤を処方し、発毛し始めました。しかし、膿皮症の原因菌は、多剤耐性で有効な抗生物質がありませんでした。そこでイオウをベースとした外用剤を処方し、コントロールしています。


アレルギー性皮膚炎

 アレルギー性皮膚炎に一般的な紅斑よりも皮疹を特徴とする皮膚炎です。非典型的パターンではないので食事性アレルギー等を疑いましたが、一般的なアトピー性皮膚炎の範疇にあるようです。

 当初は、食事性アレルギーを疑って食事療法を行いましたが、最終的には当院の低用量アレルギー処方で落ち着きつつあります。


耳道狭窄

 慢性的な外耳炎により耳の孔が塞がってきています。とりわけアメリカンコッカースパニエルでは耳の穴全部を取るような激しい全耳道切除術を要する事があります。当院では皮膚炎兆候の一つとしてとらえ、長期的にオーナー様に取り組んで頂き、耳道切除を要さず良好に管理いただいております。


猫のアレルギー性皮膚炎

 猫ちゃんのアレルギー性皮膚炎は、額に皮疹が出るケースが多いです。アトピー性皮膚炎は猫での確立はありませんが、おそらくそれに近い病態と考えております。


好酸球性皮膚炎

 猫ちゃんの背中や耳介にボツボツした皮疹を認めました。病態として、白血球の中の好酸球と言う細胞が過剰に増えています。ノミのアレルギー性皮膚炎でも同様な兆候を示します。この子は、口の中にも好酸球性の口内炎があり、痛くてごはんを食べられませんでした。ステロイドや、シクロスポリンの投薬で改善し、快適な生活を送っています。


多形紅斑

 突然全身が赤くなったと言う事で来院されました。原因は不明ですが、免疫の過剰関与が疑われます。

 一般的には免疫抑制量の高用量ステロイド療法が適用されますが、当院のアレルギー処方のハイグレード療法で一般的なステロイド量以下で寛解しました。


甲状腺機能低下症

 年齢の割に老け込み、毛艶が悪くなります。鼻の上や尻尾の毛が抜け黒く色素沈着します。毛穴が黒ずみ、乳首が大きくなる事もあります。肝酵素が上昇する事がありますが、二次性のものです。
 残念ながら診断されても、甲状腺製剤さえ投薬していれば、美しく活発によみがえります。当然肝酵素等も正常に帰します。


 
シェットランドシープドッグの肉球潰瘍

 シェトランドーシープドッグは、特徴的な皮膚疾患の多い犬種です。角化異常による肉球のトラブルもその一つです。肉球に苔がむしたような角化過剰があったり、このような痛々しい潰瘍を形成する事があります。
 角質代謝を整えるビタミン剤の内服と軟膏を中心に治療致しました。

初病日 苔むしたような角化異常があり、肉球が硬く割れてしまっています。痛みがあり、オーナー様は、わんちゃんが痛く無いようにと散歩コース選びに苦心されていました。

5ヶ月後 潰瘍自体は1が月で改善し、このような状態で落ち着いています。


ウェスティーのアレルギー性皮膚炎

 数年間、エリザベスカラーを外す事ができなかった子です。外したとたんに血が出るまで掻きむしり、緊張するはずの診察室でも掻き続けていた子です。診察台に上げただけで、フケがたくさん落ちてきました。


 3ヶ月後。今までの炎症の名残で発毛こそ十分ではありませんが、エリザベスカラーを外す生活を手に入れ、夜も快適に寝てくれています。脇や、下腹部の色素沈着の改善が、長期的に炎症をコントロールできている証拠です。


心因性脱毛 アビシニアン

 高用量のステロイド療法によりコントロールをしていた子ですが、精神安定作用のサプリメントを処方した事で改善、治癒しました。過剰なグルーミングによる脱毛、潰瘍病変が見られました。

後脚が舐める行為により左右対称性に脱毛しています。

一部皮膚の潰瘍も認められます。

後脚による耳根部のかき壊し。


 


マラセチア及びアレルギー性皮膚炎 ヨークシャテリア

 
 転院を繰り返していた子です。治療当初は、酵母菌のコントロールと低用量アレルギー処方を行いました。また、象の皮膚様になってしまったところは、オリジナルの外用薬を使用し柔らかく正常な皮膚に戻しました。
 

象の皮のよう皮膚が厚く、硬くなっています。

被毛は薄く、色素沈着が目立ちます。

 4ヶ月後。

素晴らしい毛並みに戻る

毛をかき分けても地肌の露出はありません。


 


脱毛症X ポメラニアン メス

 当院の脱毛症初期処方に抵抗を示した子です。1年間進行は抑えられましたが、改善が認められせんでした。オーナー様とご相談の上、副腎ホルモンの産生を抑えるお薬を加えたところ3ヶ月後より活発な発毛が認められました。
 

毛をかき分けると地肌があらわに

薄皮が剥けたような地肌

素晴らしい毛並みに戻る

毛をかき分けても地肌の露出はありません。


 


ウサギの肉垂の自咬症

 主にメスが巣作りを行うように自分の首の毛を噛み切り、エスカレートして皮膚に潰瘍ができるトラブルです。精神安定剤や、避妊手術、さらに思い切って肉垂自体を切除しても治りにくい、エキゾチックの専門医をも悩ませる疾患です。
 人の床ずれのお薬を処方し2週間で劇的な改善が認められました。

気管・筋肉まで露出しそうな深い潰瘍です。

この後、完全に治癒しました。