耳血腫

まず初めに申し上げさせて頂くと、耳血腫の多くは、動物が以前から耳の痒みや、炎症を訴えていたのに様子を見た、放置してしまった場合におこる事が多いです。飼主様には,動物達に更なる負担のかからない治療をお選び頂くようお願い申し上げます。


漿液が貯まり腫れた耳

吸引した内溶液

一般

耳血腫の多くは、外耳炎があったり,耳ダニの寄生により痒がっていた際におこります。とりわけ,耳の大きな犬種や、垂れ耳の犬種でおこりやすいです。耳をパタパタ振ったり、後ろ足で引っ掻いているうちに薄い耳介の皮膚と軟骨に剥がれが生じ、そのスペースに血液状の漿液が貯留します。柔道家や格闘かの耳が潰れているのをご存知ですか?あれと同じ現象ですが、耳の大きな犬では何十ccもの貯留がおこり、サツマイモをくっ付けているような状態になります。


一般的な治療法

カリフラワー状の耳

まず、治療法と言っても腫れや痒みへの内科療法のみというご選択があります。その場合、貯留した漿液の吸収を自然に任せます。しばらくは滲出が続くので、初めは病変が一部であっても耳介全体に拡大する可能性があります。治癒には時間を要し、数ヶ月かかります。しかも吸収した後の耳介は、写真のようにカリフラワー状に縮こまります。毛が長かったり、耳が小さければ良いのですが,大きな耳のわんちゃんでは,外貌上目立つようになってしまいます。

予測される切開線。この傷が切りっぱなしになります。

耳の変形を防ぐのと、早期治療のため、従来から外科療法が行われています。外科療法は、漿液の貯留部分を大きく切開します。基本的に全身麻酔となります。しばらく滲出がおこるので切開部は切ったままにし、耳介の前と後の皮膚、間の軟骨までを縫い合わせます。首を振るたびに血様の液体が飛び散り、飼主様は毎日消毒する必要があります。形の崩れを防ぐため、耳に当板をします。当然、1ヶ月近くエリザベスカラーを装着した生活となります。

当院での注射治療

投薬1ヶ月後。既に漿液は消失し,耳介のゆがみもありません。囲み部分に部分血腫が合いました。

外科治療を選択しないと治癒に数ヶ月かかり,耳の形が変わってしまう。外科手術は多くは全身麻酔で、術後、廃液に対する消毒等管理が必要。そんな煩わしさを解消してくれて、短期間で治癒する方法として,当院では漿液を抜去した後に患部に注射液を注入する方法で良好な結果を得ています。お薬は、人の抗腫瘍製剤・リンパ管腫・唾液腺嚢腫等に利用するお薬です。ほぼ1ヶ月で治癒し,耳介の崩れも最小限です。稀に2〜3日程度の局所痛が見られるので数日消炎鎮痛剤を処方いたしますが,全身的な副作用の経験は現在ありません。

注射液は、用法、用量外使用です。ご理解頂いた場合のみご選択ください。治癒後の変形には個体差があります。