猫に忍び寄る糖尿病の魔の手

 飼い猫のほとんど、そして、野良猫までが去勢・避妊手術を受けている世の中です。避妊去勢した猫ちゃんは、とても太りやすくなります。その上、お店には垂涎の美味しそうなキャットフードの数々。「うちの子、(価格が)高いご飯しか食べないのよ〜。」なんてグルメでお困りの飼い主様も多いと思います。結局、病院に来院される中齢期以上の猫ちゃんは9割以上が肥満です。

 どちらかと言えば猫は丸っこい方が可愛い。しかし、そんな可愛いぽっちゃり猫ちゃんに忍び寄る糖尿病が今回のテーマです。

 糖尿病は血液中の糖、すなわちグルコースの濃度(血糖値)が上昇する病気です。グルコースは細胞の最も重要なエネルギー源です。糖尿病では血液中にグルコースが豊富にあるにも関わらず、細胞内にグルコースが届けられず、結果、細胞は枯渇しています。肥満は血糖値を下げるインスリン分泌が低下するだけでなく、細胞自体がインスリンに抵抗してしまい、グルコースの取込み不全がおこります。犬で一般的なインスリン分泌不全単独の糖尿病と異なり、肥満による糖尿病は、人と猫の多くで認められます。

 ズバリ!猫の糖尿病は、肥満に気をつける事で十分予防できます。今からでも減量をご希望の方は、減量プログラムを案内いたしますのでご相談ください。

 そうは言っても、なかなか改善できないのが生活習慣病。残念ながら糖尿病になってしまった場合は、インスリン療法がスタートします。当然、本人に代わって飼い主様が注射しなければならないため、小まめなインスリン注射ができず、長時間作用型のインスリンを1日1〜2回ご自宅で注射します。あらかじめ注射するインスリン量を決定するため、入院または通院で注射後の血糖値の変動を測定する必要があります。

 幸いに猫の糖尿病はインスリンからの離脱が期待でき、食事療法がとても重要です。減量と平行して摂取するエネルギー源を炭水化物からタンパク質にシフトしたり、高繊維食にし、血糖値の急な上昇を抑え、さらに低カロリーダイエットを期待したりします。ここで大切な事は、どういう食事を選択するかより、飼い主様の意識を改革させていただくことかもしれません。今までどおり可愛い我が子においしいご飯をあげたい気持ちをグッとこらえてください。