犬の後ろ足のふらつきや麻痺

 近年はやりのミニチュア・ダックス等に好発し、CTMRI等の普及により診断がされやすくなった急性椎間板ヘルニアを中心に、ふらつきや麻痺を呈する疾患のお話です。治療法や予後について、現在の情報を整理してみましょう。

 突然ですが、ある日ある時、わんちゃんの後ろ足がふらふらする。または、立てなくなりました。急な痛みを伴っているかもしれません。これらの兆候だけで急性椎間板ヘルニアと決めつけてはいけません。なぜなら腹部の大動脈に血栓が詰まる病気、股関節を始めとする後ろ足の病気、脊椎(骨)及び他の脊髄(神経)の病気かもしれません。緊急を要する場合もあるので、まず病院に相談しましょう。

 病院に運び込まれたわんちゃんは、問診、視診、触診、歩き方の検査等を受けます。そして、麻痺の程度、病変の位置決めをするために、きちんとした姿勢をとるかかどうか、刺激に対する反射をみたりします。同時にレントゲン検査を行いますが、椎間板ヘルニアの可能性を示唆できても、ここで診断できるわけでありません。レントゲン検査は他に考えられる関節疾患、骨の疾患を診断あるいは除外するために必要です。一般的にはここまでがホームドクターができる範囲となります。

 引き続き、椎間板ヘルニアを筆頭とした神経学的問題を診断するには、CTMRIを大学病院等の診療施設で受けて頂きます。背骨が不安定な事により生じる病気、脊髄の腫瘍、梗塞、椎間板ヘルニア等を鑑別します。

 最終的に急性の椎間板ヘルニアと診断された場合、手術を受けなければならないのでしょうか?歩行や起立が可能な範囲なら手術を受ける優位性は、10%程度です。程度はありますが、内科療法でも8割が回復可能といわれます。内科療法のキモは絶対安静です!2週間、体長の1.5倍程度のサークルに閉じ込めてください。完全に立てない場合からは、内科or外科で成績に開きが生じるため、積極的に手術を検討された方がよろしいかと思います。特に、痛覚の無い子はなるべく早い方が良いです。しかし、以前言われていたように「48時間以内に手術を受けなければならない」事は無いので、慌てずに紹介先を選びましょう。急性の椎間板ヘルニア手術の相場は画像検査を含め30万円〜40万円のようです。内科、外科、いずれの治療を受けてもリハビリは大切で、時にコルセット等の装具を利用する事もご検討ください。

 また、同じような麻痺でも「3日以内に死亡する」と言われる脊髄軟化症という病体があります。当初に椎間板ヘルニアと思われるわんちゃんで、20頭に1頭の割合でみられ、全身に麻痺が進行します。現在有効な治療法は無く、非常に残念なご病気です。

 急性の椎間板ヘルニアは、いつ降りかかるか分からない障害ですが、大きな流れをイメージする事で慌てず、冷静なご判断をして頂く一助になれば幸いです。